ドローンは、操縦を覚えるよりも前に、バッテリーの取扱方法を確認しておく必要があります。ドローンを始めたばかりの人のなかには、バッテリーの重要性が理解できていない人もいるのではないでしょうか。バッテリーは、使い方次第で飛行中の墜落事故や発火事故につながるため、最低でも基本知識は身につけておくことが大切です。そこで本記事では、ドローンに使われるバッテリーの基礎知識からよくある質問までを網羅的に解説します。
Contents
ドローンのバッテリーとは
ドローンのバッテリーで広く使われているのは、Li-Po(リチウムポリマー)という種類のバッテリーで、『リポバッテリー』と呼ばれています。

リチウムポリマー電池とリチウムイオン電池は、基本的に次の図のような仕組みをしています。

電解液のなかに設置された正極と負極の間を、リチウムイオンが行き来することで充放電する仕組みです。
リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池のどちらも同じ仕組みをしており、電池自体を軽量化・小型化できる点も共通しています。
大きな違いは、電解液にあります。
リチウムイオン電池の電解質が液体なのに対して、リチウムポリマー電池の電解質はゲル状(高分子ポリマー)です。
高分子ポリマーは、形状を自由に変化させやすく安全性が高いことからドローンに適した電池と言えます。
ただし、リチウムイオン電池と異なり、製造ラインを完全に自動化できないため、製造コストが高額になりやすいというデメリットがあります。
以下は、バッテリーに関する基礎用語です。本記事でも登場しますので確認してみてください。
バッテリーの取り扱いで注意すべきポイント
ドローンを飛行させる際に注意しておきたい、バッテリーの取り扱い方・注意点を詳しく解説します。
- 充電終了後に過充電とならないようにする
- セルバランスの状態を確認する
充電終了後に過充電とならないようにする
バッテリーの電圧に関して注意すべきなのは、主に以下の点です。
リポバッテリーの取り扱いでまず気をつけたいのは、過充電です。
過充電とは、バッテリー電圧が4.2v以上充電された状態のことです。反対に、バッテリー電圧が3.2v以下に放電された状態を過放電と言います。
リポバッテリーの過充電は、バッテリーの性能を下げるだけではなく、火災や事故の原因になってしまいます。充電され続けると、入れ物が破裂して突然火を吹き出す危険性があります。
充電を行う際は、なるべく自分または誰か人の目が行き届く場所・時間で充電するのが理想です。「寝ている間に充電しておこう」と考える人もいると思いますが、発火や事故が起こった際に対処が遅れるのでやめましょう。
セルバランスの状態を確認する
セル間のバランスが崩れたまま充電すると、電圧差が生じて過放電状態になり、急速に劣化してしまいます。
セル間のバランスとは、リポバッテリー内の構造のバランスのことです。リポバッテリーは、薄い層をいくつも組み合わせた構造になっています。その層の組み合わせを「セル」と呼びます。1セルは電圧3.7vと決まっており、2セルなら3.7v×2=7.2vとなり、これがバッテリー全体の電圧です。各セルの電圧が大きくずれてしまうと、安定した電力供給ができず、事故につながる可能性があります。
各セル同士で0.03v以上の差が生じている場合はバッテリーの使用を控えるか、再度バランス充電を行ってみてください。
飛行前には、必ずセルバランスチェックを行うようにしましょう。
セルバランスチェックのやり方
DJI Air3を使用して、セルバランスの確認方法を解説します。
⑴まずはプロポと機体の電源を入れる。
⑵プロポが表示されたら右上の「…」を選択。

⑶メニュー画面をそのまま下にスクロールすると「バッテリー情報」があるので選択。


⑷「バッテリーセルステータス」で各セルの電圧を確認。
キャプチャのバッテリーは、各セルの電圧が3.57vになっているので、バランスが取れている状態です。また、過充電・過放電のどちらでもない状態をキープできています。
例えば、この電圧が一つだけ3.53vや3.61vになっていると、バランスが崩れていると判断できます。
そして、右横の14.27vと表示された電圧が、各セルの電圧を合計したものです。一番右端には、バッテリーの温度も表示されます。
これで、セルバランスの確認は終わりです。
飛行させる前には、必ず確認するようにしましょう。
バッテリーの温度について
リポバッテリーは、保管・使用の際の温度変化に非常に敏感です。
まず、暑い場所にあると電圧が上がり、寒い場所であれば電圧が下がります。電圧が上下するということは、発揮できる能力に差が生まれるということです。
例えば、夏の車内のような高温になりやすい場所を想像してみてください。車内にドローンのバッテリーを放置していると、室温の影響でバッテリーの電圧が上昇します。この際にフル充電状態のバッテリーであれば、過充電状態になってしまい、バッテリー自体の性能が悪化したり、発火や爆発といった事故につながったりする可能性もあります。
逆に寒い場所では、フル充電をしていても電圧が下がるため、通常のフル充電で飛行できる時間よりも少なくなる可能性があります。つまり、過放電状態になってしまい、飛行に影響を与えるということです。
バッテリーの理想的な温度は、20°以上であり、30°〜35°くらいだと安心できます。冬場や寒冷地での飛行では、バッテリーをフル充電したうえで、湯たんぽやカイロを活用してバッテリーを保温するのがおすすめです。
ドローンのバッテリーに関するよくある疑問
ドローンのバッテリーに関するよくある質問は、以下の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
まとめ
本記事では、ドローンで使われるリポバッテリーの注意点について詳しく解説しました。
リポバッテリーの取り扱いで気をつけるべきポイントは以下の通りです。
- 充電終了後に過充電とならないようにする
- セルバランスの状態を確認する
充電時間は各バッテリーによって適切な時間が決められています。DJI Air3であれば取扱説明書に以下のように記載されています。

必要以上に充電すると、過充電になりバッテリー性能の低下や事故の原因になってしまいます。
適切な使用を心がけ、安全にドローンを飛行させてみてください。